カオスドラマX

Gray Traveller / 591

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わったん 2026/04/19 (日) 19:38:51 修正 >> 580

「……」

ただいまを言う事が出来ない。
俺は、その現実を受け入れられない。
逃げたかったんだ。どんな形であれ。
それが死であることを望んだ。
だが、悉く俺は死にきれていない。
それはきっと、仲間達の意志なんじゃないかって、思い始めたんだ。

「……」

テト……。
君に会う為に、俺は多くを失い、多くを捨てる事さえ厭わなかったはず。
だが、きっと君は、俺に生きろというのだろう。
そう、願ってくれていると信じてしまったんだ。

「……」

立ち上がり、老人の横を通り過ぎる。
部屋の出口に置かれたクリスタルケージ。
淡く光る、『希望』
言葉通り、最後まで入ったしずく。
それを手に持つ。

「おい、何する気だ」

部屋を、出る。

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  • 593
    わったん 2026/04/19 (日) 19:41:19 修正 >> 591

    村の中枢、クリスタルが光を放ち、傾いている。
    その光は、見てわかる程に薄れており、クリスタルの死が近い事を示していた。

    「この時間から外に出るのは危険だ」
    「明日の朝、港まで送る。今日はもう寝ておけ」

    後ろから追いかけてきた老人の声。
    すると、ややざわつき始めた家々から、一人、二人と姿を現し、目を擦る事もなく、心配気に俺を見る。

    「あ、おにいさん」

    聞き覚えのある少女の声。
    それは徐々に近づき、俺の足元にまで来た。

    「もう、身体は大丈夫?」

    「……」

    「あの、ごめんなさい……」
    「おにいさんは死にたがっていたかもしれないけど――」

    「思い出、なんだろ」

    「……?」

    「旅は、楽しい方がいい」
    「俺を介して哀しい思いするんだったら」
    「それは……いい思い出になって欲しい……」
    「俺が生きてりゃ、君にとって、良い思い出になる」

    「うん」

    「……」
    「どうか、この先も」
    「君達は希望を紡いでくれ」

    「……おい」

    「レビ」

    「――」

    「レビー!」

    「――」

    「レビ氏」

    「――」

    「レビ!」

    「――」

    「行ってらっしゃい」

    手元のクリスタルケージを掲げる。
    夜空一面で輝く星と、それにそっとかかる月の光の下で、
    美しく一本の光の線を作り上げながらゲージ内の雫は天へと消えて行く。

    「何して――!」

    俺の集めた希望は、ティパの村のクリスタルに取り込まれ、美しく輝きを取り戻した。

    「それは、ティダの村の――」

    「いいんだ……」
    「もう、やっちまったことなんだから……」

    「――」

    「おにいさん」

    「俺が死なないように、色々してくれただろ」
    「お礼だよ……」

    「……ありがとう、おにいさん」

    衝動的で、理由も付かない行動だった。
    ティパの村に俺達のしずくを分け与える義理などなかった。
    でも、そうしたのは、君が傍に居てくれたとしたら、
    そうしようって言ってくれると思ったからなんだ。

  • 594
    わったん 2026/04/19 (日) 19:42:05 >> 591

    「……水かけ祭り」
    「……君と……一緒に……」
    「踊りた……かった……なぁ……」
    「テト……」

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