「……」
「……」
「旦那、気を使わせて悪かったな」
「再三だが、俺は大丈夫だ」
「傷は癒えちゃいないが、時間が解決してくれたものもある」
「思い出が薄れて、零れ落ちるものもあったから」
「レビ、今日はもう寝ろ」
「明日は休んでていい。鍛冶屋には俺から伝えておく」
「……」
旦那は俺の肩に手を置き、数度叩いてから部屋に戻った。
月明かりが、急激に影を落とした。
帰る理由が明白だった日々。
身体の傷を無視して、帰る為に前を向く。
過去を振り返りながらも、振り向く事をせず、
必ず辿り着くはずだった希望のキャラバン。
俺は、瓦解した。
だから、もう帰る事は出来ないと思った。
身体だけが残った俺の存在は、感情として確立されていない。
でも、あの手紙に残っていたのは、
俺に生きていて欲しいという願いだった。
「……」
滲んだ字が、感情を揺さぶった。
気丈に振舞った手紙。だが、最後の文で見せた本心。
魂が叫ぶ。
俺は、帰るべきだと。
「……」
また絶望に彩られるかもしれない。
だが、どうだろうか。
俺は、帰る。
帰らねばならない。
「……」
希望は確かに絶望に塗り替えられた。
だが、希望を紡ぐ事は出来た。
そしてまだ、希望は燻っている。
俺という、希望が。
なればその凱旋をあげるには、俺が立ち止まっていてはいけないんだ。
「……」
月夜の灯りが、俺の目を照らす。
家の端にあった鏡には、俺の目に光が燈っていた。
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