かとかの記憶

神林長平 周回 / 48

48

「敵は海賊」(虚淵玄)。著者のプロフィールについて知らないわけではないし、本作に不満なわけでもない。饒舌なのが悩ましいけど……敵は海賊シリーズの饒舌は必ずしも常にそうではないとはいえ、ことにカーリーがしゃべくるときは常にそうだとは思わなくもない。

メルチド・ザウラクのエピソードを踏まえているけど、ここではメルチドの比重はほとんど取るに足らないほど小さいので、これを踏まえて後に原作の時系列に合流したらいくらか微笑ましい気分で読むかもしれない。それは面白いな。原作者の神林長平自身が「短篇版」の一篇として書いていてもありそうなエピソード。「それが読みたかったか」というとべつにそれほどでもない。軍艦のスペックを綴るところなどは著者ならではの腕前が揮ってるんだろう。わたしは虚淵作品は、何かしらタイミングが悪くてあまり触れていないし、そのファンにはなっていない。

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  • 49
    katka_yg 2026/06/12 (金) 10:28:00 修正 >> 48

    神林筆でも書かれそうな話だというのは、さきに雪風からの「棘を抜く者」にも読んで微妙な気分になる。原作者が書いていてもそんな気分になるはず、と思う。

    原作キャラクターを動かすからだと思うんだけど、このトリビュート集の企画がそうだからな。各作品のタイトルを指定してお題にする、という。早川書房編集部編だからやむないとはいえ。虚淵玄には『ラーゼフォン』を書いてくれと求めればよかった。それだけで実に面白いのに。

  • 50

    最初の設定にある『世界の全ては自明でなければならない』という動機について、日本のSF読者が古典的に馴染んでいる「知的冒険」観……ただひたすら知りたいから、が衝動で世界に立ち向かうのが科学者という科学者観には、わたしはずっと前から嫌悪を抱いている。それは科学者の動機ではない。

    だいたいSFクラスタの集まりが嫌いなのでわざわざ言う機会もないけど、今でもネットで子供がそういう話をしていると傍目にかなり不愉快になる。このまえル・グインの短編から「マスターズ」を読んでいる間にそれを思い出していた。

    今もっと興味の深いのは、同じ言い方でも『理由はない』バイストン・ウェルのコモン人の言い草が、先日『リーンの翼』で見た。富野由悠季がそんなに早くそこまで言っていたのにわたしは読み返して動揺していた。虚淵さんの「闘争」というのもわたしはよくわかるので、その一点を押さえておけば虚淵作品を読めそうでもある。『鬼哭街』など手元に既に積んではある。