英才教育
「19 海の声」(旧)
「13 ゲルドワの噂」(新)
リンレイの教育をしたガンビア・アムという旧臣は、概念的にはリンレイ・メラディの血筋、その属する領地のありようなどを教えてくれた。しかし、そのうえにガンビアは、リンレイが現実的な生き方を出来る女性に育つようにも腐心した。(旧)
この「概念的には」は完全版では「蓋然的には」に改められている。富野作品の蓋然的な言い方についてこれまでも思案がくり返したが、ここにきて、わたしの読むところではやはりここは「概念的」が意味として合ってる気がしてならない。しかも、あえて意図して書き直しているところだ。
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家系の歴史や領地経営の何たるかについて、ガンビア氏なる旧臣の授業の内容が変わらなくても、本文でその評価を「概念的」「蓋然的」と言い替える区別はある。
ガンビアの講義は幼いリンレイの初学として、まず貴族としての考え方・心構えを伝授する座学として始まった。そのために家系学や経営学でする言葉の意味や、初歩の理論を説いたが、「では領地に行って実際にやってみましょう」というものではない。概論をやってくれた。
ここまではいいとして、それを蓋然的にというときには、説明のために「範型」や「定式」を多く示してくれたが、これはあくまで生徒にわかりやすくするために定式化してみせた、模式であるが、という条件付きのニュアンスが文に含む。もっとも、この後に続く文章では、ガンビアはそれにこだわらず、リンレイが現実的な生き方ができるようなトレーニングに腐心してくれた、と続く。
逃亡生活の十年のうち、表向き海賊のような暮らしをしながら、人目に触れないところでは、ガンビアはリンレイを女王たるべく英才教育した。躾けをした。
貴族的な規範が追加。富野作中の「規範」の語については以前に扱った。貴族としてのふるまいのコード、当たり前にすること。
以下、わたしの最近の雑想中より、
井荻麟詞では愛し合うことも「愛する作法 」と呼んだりもする。「英才教育」といえる。