名前なし
2025/08/04 (月) 11:06:21
58610@88ed6
長いので格納
海外国内を問わない軍事クラスタで散見される「現代において傾斜装甲は無意味」という意見についてなのですが、APFSDSが跳弾しないこと、入射角がきつくても垂直に近い角度になるように浸徹していくことなどが理由として挙げられていることが多いです。
ですが、下記の画像のように、基本的にAPFSDSは直進するように思われます。
であるならば、見かけ上の装甲厚のかさ増しや、形状を少しでも球形に近づけることで単位容積あたりを囲むのに必要な装甲板を減らすことができるという利点は未だ有効なのではないでしょうか?実際、90式や初期レオパルト2などの垂直装甲の時代を経て、最新鋭MBTの装甲には再び傾斜装甲が取り入れられています。
個人的に「傾斜装甲は無意味」という意見に関して最も有力な根拠は、「現代MBTはそもそも正面以外の対APFSDS防護を考えていないため、一方向のみからの被弾を考えるなら傾斜装甲にする意味がない」ではないかと思っています。
この主張をしている人を見たことはありませんが...
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見かけの装甲厚の増加って計算してみると板面積が垂直装甲に比べて増えるから、結局重量は垂直と同じになるんだよね。で、壁が斜めの使いにくい車内空間が残る。木主が骨のある理系なら見かけの装甲厚を高さで積分して幅をかけて体積求めてみ。垂直装甲と傾斜装甲が厳密に同じ体積(=同じ質量)になるという結果が出るはずだ。
今でも小銃弾や機関砲弾に対しては傾斜装甲は有効なはずで、IFVとかAPCが車体前部上面とかで傾斜した装甲を使ってるけど、これはどうせ天板で覆わなければいけないので天板を傾斜させて正面装甲の面積を減らそうという発想にみえる。
ついでにいうとWTで10式戦車とかをX線ビューで見ると垂直装甲にみえて内部の複合装甲は傾斜させててるけど、跳弾狙いではないから傾斜装甲と呼ばれてないだけだな。
一応理系です。文章が下手で申し訳ありません。おっしゃる通り、実質装甲厚が等しい垂直装甲と傾斜装甲の体積(=重量)は等しくなります(高さと底辺長が等しい平行四辺形はどんな形でも面積が等しいため)
傾斜装甲による見かけ上の装甲厚の向上という表現は、絶対的な装甲厚(垂直な厚さ)をそのままに傾斜させれば正面からの砲弾に対する実質装甲厚が向上するという意味で使いました。このとき、正面装甲だけで考えれば重量は増えますが(装甲が長くなるため)、傾斜装甲は正面装甲と天板または側面の一部を兼任できます。もしも天板や側面にも正面と同等の装甲を施す必要があるならば、傾斜装甲は防御力の向上と軽量化を両立できると言いたかったのです。
現実では天板/側面に正面装甲に匹敵する防御が求められることはないため、実際に私の方法で軽量化できることはほぼありませんが...
「全周を同じ装甲厚で覆うなら球形に近づけば近づくほど軽量化できる」のですが、「現実では正面装甲だけを重視するので、それなら垂直でも傾斜でも重さは変わらない」という感じでしょうか。
傾斜装甲の内側のスペースは利用しづらく、結局は実質的に利用できる容積が減ってしまうという指摘は私もその通りだと思います。
(戦車砲に対しては)跳弾誘発というメリットがなくなり、全周防護も廃れた現代では、傾斜装甲のメリットは大きく減ったという認識でいいのでしょうか。
だいたいその認識を自分はしている。全周硬くしようと思って球形に近くなった例でいくとObject 279とかになるんでないかな。APFSDSとかになると傾斜装甲に食い込む方向に曲がるので見かけ装甲厚以下の性能になるとか言われてるけど、詳しい人に解説を任せたい。
少なくともレオパルド2や90式、10式に採用されている拘束セラミック装甲は小さい6角形(ハニカム型)のセラミックプレートが並べられているので傾斜させ過ぎると割れるセラミックの量が多く、かなりの範囲の装甲が対弾性を失うor低下するので垂直に近いようにする他ない、レオ2A5以降や10式も楔形装甲になっているがその部分は空間装甲でその後ろに本命のほぼ垂直の装甲がある
下の枝でも触れられてるけど、要点を話すと
現代において複合装甲は無意味というのは半分間違いで半分正解
・恐らくGen2MBTは避弾経始を意識された戦車が多く、その点について現代では無意味と言われてるものが多いと思われる。
・現代の複合装甲においてセラミックは必須だが傾斜装甲にした時のデメリットが大きい
「現代において傾斜装甲は無意味」というのがまず間違いで、実際に,砲弾の試験では傾斜した複数枚の装甲からなる標的もあり、装甲の傾斜は依然として配慮が必要な対象であるのは間違いない。
>基本的にAPFSDSは直進するように思われます
これはその通りで、厚くて均一な鋼板の内部では、論文とかシミュレーションとかみてても概ね直進する。あとは,厳密には入射時にも若干食い込むような動きを見せることもあるがほとんど無視できる。但し、射出時には斜めに進み姿勢を崩すことがある(後述)
>見かけ上の装甲厚のかさ増しや、形状を少しでも球形に近づけることで単位容積あたりを囲むのに必要な装甲板を減らすことができるという利点は未だ有効なのではないでしょうか?

大戦期の戦車で装甲を傾斜させるのは,天板の質量を省く効果より、同じ見かけの厚さでも防御力が向上することを狙ったものだと思う。これは,従来型の徹甲弾では傾斜があると弾が外側に逃げる動きをして(跳弾とは異なる)、視線方向の厚さ以上の防護効果をもたらすため。ところが、APFSDSの場合は出口側で最も薄い方向に抜け出す動きをするので、傾けると視線方向の厚みに対して実効的な厚さが減ってしまう(図)(この斜めの力で姿勢が崩れる)。更に、薄板は打ち抜く破壊モードが起こりやすくなり、プラグ状に打ち抜く破壊モードに弱いセラミックスと相性が悪い。枝2の言う複数タイルが割れるというのも相性の悪いポイントの一つ(但し10式は衝突時の熱と圧力で割れたタイルが再生するとかいうので当てはまらない可能性あり)。ということで、セラミックス装甲 vs. APFSDSの組み合わせにおいては,傾斜させると害が大きい。
>形状を少しでも球形に近づけることで単位容積あたりを囲むのに必要な装甲板を減らすことができる
セラミックスは自在な形状にするのが難しく極力単純な形状にしたい。例えば10式は防盾周りの複雑な部位は防弾鋼で出来ている
>最新鋭MBTの装甲には再び傾斜装甲が取り入れられています
どの戦車のどの部位の装甲を想定しているのかは分からないけど、いわゆる伝統的な傾斜装甲ではない可能性には注意が必要だと思う。ERAやNERAは砲弾の軸に対し横から力を加えるために、原理上傾斜させないと意味がないから傾けてる。あと,ガワの表面が傾いていても、ただのカバーである可能性にも注意が必要
取っ散らかっていたので補足
まず、装甲は想定する対象との組合せで傾斜の効果が変わってくる
A. APFSDS vs セラミックス:先述の理由から傾けない方が良い
B. APFSDS vs 防弾鋼板:抜かれること前提なら、傾斜装甲にすると抜けた後の弾体の姿勢を崩せる。抜かれないことが目的なら垂直が良い
C. 従来徹甲弾 vs 防弾鋼板:傾斜させると見かけの厚さ以上の防御力を発揮する
D. APFSDS vs NERA/ERA:傾けないと効果がない
E. ただのカバー vs 草木:傾けた方が立木や草の排除には適してると思う。あとデザイン性
この他、傾斜させる理由には次のものがある
F. 製造を容易にする:一般に薄い方が製造難易度は低い。よって見かけの厚さが同じなら傾斜した薄板の方が製造難易度は低い。しかし現代だと、防弾鋼板は、製造技術の向上・生産数が少なく生産性の要求が弱いことから利点としては弱い。セラミックスは複雑な形状にするのが難しいのでかえって製造難易度が上がる。
G. 天板の面積を減らせる:確かに内部容積一定なら傾斜させると天板面積が減らせる。でも、有効に使える容積一定の条件下では差は縮むし、最大幅は増大する。ということでどの時代でもこの効果は求めてなかったんじゃないかなぁ?(フワフワした表現)特に側面装甲は、あまり傾けると最大幅が広がって鉄道輸送上の制限に引っかかってしまうし立木・岩等にも引っかかりやすくなる。現代だと,前面装甲がずば抜けて厚いので多少天板や側面装甲を減らしてもほとんど誤差だと思われる。ただエイブラムスの砲塔正面は、NERAの都合もあるかもしれないが多少側面装甲の削減を意識しているかもしれない?

H. 正面装甲の高さを減らせる:K2とかで顕著だが、砲塔天板を大傾斜の傾斜装甲とすることで正面装甲の高さを減らす効果を狙ったケースも。重量低減効果は割とあると思われる。但し、K2なら突出した砲の部分は弱点になるし、多少上からから撃たれたら簡単に抜かれそうでちょっと不安ではある(個人の感想)。実際、90式プロトタイプでは類似の配置になっていたが、最終的な配置はご存じの通り。多分理想的な状況以外では不利な点が多いんじゃないかなぁ?
ということで、
・「現代において傾斜装甲は無意味」というのは誤り。上記Bの抜かれる事前提のケースでは斜めにした方が良い。また、一般的ではないがHも現代の傾斜装甲と言えるかもしれない
・一方で、従来の利点の多くは技術・材料の変化等で無くなった/欠点が目立つようになったのも事実
整理ありがとー。Hは多分自分が出した話だけど、MarderとかBMPとかのフロントエンジンな軽装甲車両の車体前部上面の話をしていて、Cに相当するのかな。
T72シリーズ車体正面は薄い鋼板と空間装甲のミルフィーユだけどBを狙ったのと鋼板を抜いた瞬間に圧から解放されて弾体にダメージ与えるのが狙いらしい。大傾斜必須だから砲塔は採用してない
傾斜と戦車砲のAPFSDS防御の関係主眼で書いていたので記載してない要素は結構あります… ↑↑あのクラスの小口径機関砲防御組はC+H+跳弾+操縦席の下方視界確保の一石四鳥って感じじゃないかなぁ…しかし実厚11mm、視線方向45mmの装甲が70mm以上の効果を発揮するのすごい (小並)
傾斜複合装甲の難点である「曲面や角が増え容積が複雑になり合わせたセラミック加工が困難」はT-64系列あたりで既に極まってるのが面白いよな。鋳造装甲との組み合わせで傾斜を最大効率で盛り込もうとして、結果如何に詰め込むかに躍起になってる。ボール状のセラミックを埋め込む形を取ったり、後にはチタン円筒で拘束したり。逆に砲塔天板を頭頂部盛り上がらせてお椀型にしたり、車体前面に燃料タンクを嵌め込むのは複合装甲以前からのスタンダードな形の継承に収まっている