かとかの記憶

アケローン民話 / 36

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katka_yg 2026/09/03 (木) 17:57:11 修正 >> 35
  • 「今日の海の気分はどうかな。船に乗るかい?ちなみに乗るのは俺もはじめてだ」おまえ陸サーかよ!?
  • イリアはにぎやかな国だと聞いていても、遠くてここまで来たことなかった。港に《たんぽぽ号》を泊めて
  • ハーバーの使用料を払うと、逆に何日か余分に滞在しないと割に合わないって思った。人間の宿泊費は安い
  • 温暖な港町に滞在中、海辺の魚だいぶ釣って、あと、ここの大魚はわたしの手に負えなかったので、最後は
  • 冒険者のネットで見た「山方面」を攻めてみようとトレッキング装備を固めた。「定番の穴場」だそうだ
  • ふもとの神社に参拝し、峠越えの道を行く途中、脇に目立たない登り口がある。こっちは裏ルート
  • 登り道は藪が深くて、秋口でも長袖必須。やぶ蚊よりヒルが危ない。蜘蛛の巣だらけ帽子必須。登りきると
  • 藪を抜け、木々が開けて、そこに静謐な沼が広がっている。思わずほーーっと息をつく。水辺には
  • 昔のミサイリスト像が立ってて、どれも風化して首がもげていた。たぶん一万年くらい人の目に触れてない
  • 列をなして並ぶ首なしトルソはぶきみだった。でも足下に転がる石頭の、このひとたちの温和な無表情には
  • 斬首された仏陀みたいな寂寥感あった。沼のはたに座って釣り糸を垂れていると、時を忘れるみたいで
  • 静かだ。静止した沼が木漏れ日を映している。気がつくと……緑色の水面に、緑色の頭が一個浮かんでいて
  • こちらをじっと見ていた。ぬっと水から浮きあがり、そいつはこちらにざばざばと歩いてきた
  • わたしはとっさに釣竿を捨てて、護身用のデリンジャーで当てられる自信なかったけど、固まってしまい
  • 不審者に襲われる小学生の気持ちわかったと思った。狂暴性をふりしぼり、近づいてくるそいつに
  • 「南無八之地大菩薩」の八字をとなえ、しゃあっと髪を逆立ててやると、威嚇におびえたのか向きを変えた
  • 河童の飛び込んだ沼にどぼんと波が広がって、興奮のさめないわたしは、あんなゴブリン敵じゃないわって
  • 言いたいけど、あのまま襲ってきたらきっとわたしは死んでた。正直こわかった
  • ニオベからカーク海域に入ると潮の色が変わる。空は灰色。この暗い空の色が、わたしには今なつかしい
  • 船の向かう先は、わたしの島。波の上に標識ブイはなくても、海にも見えない道があって
  • 遠くの海を見てくると、それがわかる……丘の上に、うちのアンテナがみえる。工作所の鉄塔が見えている
  • 岸壁に船をつないで、身ひとつで船をおりた。波に洗われたコンクリートはローファーだとすべる
  • 海に出て手に入れた、この島はわたしのたったひとつの領地。もちろん生まれ故郷じゃないけど
  • ときどき帰ってくるここを、「わたしの家」というのかな。管理人さんに任せてあった、わたしのお花畑は
  • わたしの手入れよりずっと綺麗にしてあって、ずっと元気そうな草花たちにわたしは少し嫉妬おぼえた
  • 花壇の前で沈んでるわたしのメランコリーを管理人さんは放っておいてくれた。二時間くらいして
  • わたしは部屋の勉強机から、窓の下の花壇をやっぱり見ていた。電子サンドイッチ、海月味コーヒーゼリー
  • 来週にはまた船出する。わたしがこのまま、二度と帰ってこなくても、春には咲くんだよ
  • 期末試験があけてようやくまた船に乗れる。海に出れる。《たんぽぽ号》の舵は錆びついてない?
  • フジツボついてない? 友達と仲直りはしたけど、わたしが船乗りってことは言えない。たぶんずっと秘密

《シーツリーを放浪する船乗りの日誌 たぶんつづく》

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    また民話、説話というわけではとくにない。これは過去に、Sea Treeのゲーム中のアイテム「釣り日誌ノート」(自分だけの記入する単文テキストを投稿して公開できる)で『電子海のはなし』の小花をフィーチャーして連続投稿していたもの。アスラの初期頃について触れているから2016年頃か。事典から用語に注記を入れつつ再掲。

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