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katka
2025/12/23 (火) 00:09:17
Storyteller: A Tanith Lee Tribute Anthology
2025年発売のトリビュート集。しばらく前から話題に上がっていたのを電子で購入。上の通読とこれは併行で今読むことにする。そんなに早く進まない。
Foreword (John Khane)
この序文を読むだけでも胸に迫るような故人の紹介。わたしはこの文そのものはどこかで読んだことがあるが……この本のウェブページかどこかに載っていたのかな。今夜ここまで。
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小谷真理さんが言及している「草稿」はこの a dirty little ditty about a duck …のことかな。何にせよ今わたしは作家資料を何でも蒐集しようという段ではない。
Introduction (Julie C. Day)
Lousia the Prisoner (1995)への言及は初めてみた。ネットに情報がないので。
本書読者への導入というかタニス信者の信仰告白のようなもの。タニス作品が読者に何を与えた(与える)かについて簡潔に誠実に書かれている。
Makers (Cl Hellisen)
これはひどい。と一読して思ったが、別にわたしに作品や文章を悪くいう筋はない。Storytellerの先頭がMakersでその寓意は明らかだが、寓意より弔意と言ったほうがいいのかな。寓意が占めていてユーモアはとぼしい。
とにかくタニス・リー作品を読んでリー作品の特徴やお約束はこれ!という諸属性を一篇の中に詰め込みまくってある。いろいろあるが、やはり汚物と悪臭がしてきたない。わたしは今、Anackireを読み終えてWhite Horseに移ったところなので、せっかく清潔なジュブナイルに戻ってきたところでまたひどく不潔な話に逆戻る気分。この本このあともそんなか。
文章については、なぜ魔法が効くのか、魔法の使い方では"I'm done"がリー作品と似たような効果を狙っているのはわかる。わたしは今パロディ要素が先に立ってマジックが効いているのかよくわからなかった。この世界の物理的なルールの一つとして超能力者が認められているという感じもする。
Ruは文中では単数のtheyで指示される。日本語に訳すときどうするんだろう。「彼女は」と書かない。「その子は」でも、毎回だと煩わしいが、原文がもともと煩わしいのだし、日本語だと消極的に主語を省いて言及を避ける書き方もある。ジェンダー意識してない一人称では「おれ」と喋る等。
短篇は短いのに結末までリー的にしなくても、第一番でこの後が続くのでぶつ切りに終えてもいいのに、結末もパロディでしっかり完結してある。ここは、Behind them,を三回くり返してAhead,で切り返す。わかるけどトリビュート集の最初から笑ってしまった。これは面白い。
この数日、わたしは久美さんの『あけめやみ とじめやみ』を読んでいて、リーのオマージュをしたら日本読者ならまずどこを採るか、「あけめやみ~」の頃は文体までなぞっていない。『ドラクエⅣ』やソーントーンは文章が浅羽莢子みたいになってるが、内容の魔法の使い方やレトリックは採用していない。その人によってのポイントも今は感じる。
On Her Head a Crown of Twelve Stars (Rocío Rincón Fernández)
文中に言及されている地名 Venus and Marcheval のヴェヌスは「ヴェヌスの秘録」シリーズのヴェヌス、マルシュヴァルは A Different City (2015) からの四作シリーズの舞台、らしい。後者は未訳だし上の年譜に書き込んだだけでわたしは知らなかった。まだどんどん増えるな。
パラディスについても。
「バルセロナのエウラリア」の伝説を踏まえている。観光地のビーチを舞台にThe Stainと対決する現代の聖女譚。当地ネタと、英語とスペイン語由来の俗語、スラング等が頻出するがネット検索すればすぐにわかるので今現在そんなにハードルがない。
パラディス等に触れているようにこれは不条理か、マジック・リアリズム的か…というと、この語り口はリーでもあるが、そういえばあたかもガルシア・マルケスのような連想もしていた。最近その作品集を読み返していたし。ちょっと面白いのは、わたしは昨年からの経緯でリーのファンタジーと日本の和田薫音楽を混ぜて聴いていたけど、本作では文中の言及からまるっきり伊福部昭が鳴り響いているようなシュールな奇観でもある。これは「平和の祈り」かな。
The Jealous Wives of the Sea (Alaya Dawn Johnson)
また間が空いたが再開。
海面が上昇して破滅に瀕した近未来世界。人類は沿海と海中都市に逼塞して生き延び、社会を保つためにグロテスクな科学技術にも頼っている。海からの襲来する未知の脅威に晒され続けてもおり……具体的に書き込むとすぐに小説の内容に踏み入ってしまうな。
いま4まで。今日はまだ読み終えていないけど、この近未来の海の破滅的なSFのシチュエーションと人倫にもとるようなグロいイメージは日本SFの近頃の作品にも珍しくないように思え、とくにリーのトリビュートの気がしない。若い女性主人公の一人称。
あえてリー作品の連想を思うと、既訳でアンソロジー収録の短編「雨に打たれて」に近いような雰囲気を感じる。舞台設定や人間関係は全然違うが。そういえばこの世界の人々は「雨を恐れている」要素もあるな。この場合は海や水全般を恐れていると思うけど……それも書いてある。
ストーリーの諧謔みはタイトルからも想像でき、「雨に」のような話ではない。わたしは昨年OVAの「青の6号」を見返していたのでそんな話を途中どこか期待していた。これはタニス・リーのトリビュート。
Where Walls Once Rose (Marisca Pichette)
短いのでまた何を書き留めても印象を壊してしまうようだ。「彼女」が誰で「本」に何をしようとしているのか……からかな。前話と同じく、SFとしては見慣れたシチュエーションかもしれないけど、言葉(文字)を綴ることへのオブセッション、語り継ぐこと、にはリーへのトリビュートも寄せられているのだろう。
「コメントは控える」ことまでいちいちコメントしていると、このツリーは長大化してじきに折り畳みが入ってしまう。このアンソロジーはすぐに読んでしまうつもりで通読のメイン下でしていたけど、結局ぐずぐずと持っているから別トピックに分けよう。以下そちらで続き。