かとかの記憶

宇宙説話 / 43

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katka_yg 2025/09/10 (水) 14:29:39 修正

高校生のアマテの身に起こったこと

高校生のアマテがサイド六にいた。昼間は学校に通いながら、夜はモビルスーツバトルに手を染めている邪悪な女子だった。アマテの腕前は並大抵ではなかった。アマテはガンダムを持っていて、アマテが狩る相手もガンダムに限り、それもニュータイプの、美少年か美少女に限るといわれていた。ジオン軍のシャリア・ブルがアマテを訪ねてきたとき、彼が示した報酬はむろん、金銭ではなかった。軍が捕らえている難民の少女はアマテのすこぶる好みで、絶望して泣き叫ぶ姿はアマテの欲望をそそった。

夜になり、母親の就寝を確かめると、普段は巧妙に隠してあるガンダムを取り出し、アマテは家を抜け出した。赤いガンダムが棲むという地下への道には、コロニー自警軍が厳しく目を光らせているが、アマテの身のこなしは巧みで警戒線にかかることはなかった。一度、警官のザクが追ってきて彼女に掴みかかったが、ガンダムの肩はすべすべして簡単にすり抜けてしまった。

地下の世界に降るほど、時刻は深まり、夜は更けていった。最後のハッチのロックを開くと足元に星々が広がった。そこには宇宙空間が描き込まれており、太陽と、地球と月と、無限遠に散らばる無数の星の一つ一つが、巨万の富を生む宝石に値した。だが、アマテは欺かれなかった。アマテの脳裡にはひたすら、難民の娘を好きにしていいこと、このあとで彼女を弄ぶ残忍な遊戯のことしかなかったし、この宇宙のどこかで、これらの星を描いているだろう赤いガンダムのことを思うと、身震いしたが、恐怖は感じなかった。今頃はシャリア・ブルは憂悶に身を揉んでいることだろう。母親は何も知らずベッドで眠っているはず。赤いガンダムはこちらに背を向け、今、一心に宇宙に星を描いている。音もなく息を殺して、アマテはその後ろから忍んでいった。彼の首に斧の刃を当て、無慈悲に、一息に引き切る。

首を抱えて地上への道を急ぐ間、アマテはあえて彼の顔を見ようとはしなかった。アマテはそれほど迂闊ではなかった。エアロックのハッチが閉じると、サイコミュが悲しい歌を歌いだした。心の耳を塞いで進んでいき、動き出したエレベータの壁にもたれかかると、首から滴る赤いガンダムの血が床に広がった。血だまりからは再び星々がきらめき、そこから新たに宇宙が描かれていくようだった。心の目も塞いで歩いていくのは次第につらくなり、ガンダムは何度もつまづいた。ついに立てなくなったとき、アマテはやっと目を開いて彼の顔を見た。シャロンの薔薇の祝婚歌が、再び耳にもどってきた。

消息不明になったアマテの母親は悲しみ、シャリア・ブルの憂鬱は止まない。軟禁された少女は今も部屋で自習を強いられながらジオン大学への進学を夢見ている。きっとまた会えるとガンダムは言っている。アマテは邪悪な女子だったが、また同じ頃に宇宙に暮らす大勢の女子の中でとりわけて邪悪というほどでもなかった。

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