かとかの記憶

アケローン民話 / 13

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katka_yg 2026/05/07 (木) 18:33:34 修正

夜にしか見えないもの

その昔、ガラテア王女が買収した国々の一つに夜半(ヤハン)の国があった。この国では空から燃える隕石の雨が降り、普段から表を歩くだけで大変危険だった一方、隕石から得られる鉱物資源は科学と産業のめざましい発展をもたらした。その引き替えに国では大気汚染が進み、空はいつも厚い煤煙に覆われ、昼間でも夜中のように暗かった。

中学生のサウス・ノードは昔の王家の末裔であったが、今の時代にはすっかり零落した家庭で育った。下町のアパートに暮らすサウスは、病気がちな母を助けて生計を支えるためにアルバイトを掛け持ちし、毎日、学校が終わると道路工事現場やゴミ処理場に通っていた。その頃のヤハンの街では、フィルターの不十分な自動車の排ガスや廃棄物に混じる有毒物質のために子供達の健康な発育が損なわれ、毎年大勢の子供が喘息で死んでいたが、サウス・ノードは頑健な身体と心肺の持ちぬしで、汚染をものともせずに働いた。

夜には街中の仕事場を行き来し、いつも煤と埃で汚れ、防塵マスクとゴーグルを着けているサウスは、学校でも周囲から汚い、臭いと指さされて嫌われていた。でもそんなことは気にせず、サウスは中学とアルバイトを両立して健気にがんばっていた。そのころ、サウスの身近では不穏な噂が多く、身を寄せる拠り所のとぼしい子供を狙った事件が相次いでいた。夜、裏通りに子供の悲鳴が響くと、駆けつけた人々の目の前には恐ろしい血溜まりが広がっている。そして通りの上空を正体不明の円盤が飛び去っていくというのだった。

道路工事の仕事中、サウスはUFOによる誘拐を目撃した。夜遅く、やはりアルバイト帰りの少女達が路地の角から現れたコートの人物に襲われた。少女のうち二人は道に突き飛ばされ、一人の少女は腕を掴まれながら必死にもがき抵抗していた。少女とMr.UFOは頭上から降ってくる光の中を上昇していき、やがて上空の円盤に吸い込まれて飛び立った。道路作業員達とサウスはしばらく円盤の後を追いかけたが、円盤は宣星会幹部の屋敷の敷地に消え、そこまでで追跡は阻まれた。

宣星会はこの国で最近勢力を振るう団体で、貧民や旧王党派に排斥的な活動をしていた。議会の有力派閥である民衆派の議員や、民衆派と関係のある資本家とも結託していて、街の屈強の男達といえども宣星会が相手では手も足も出ない。同僚の作業員達も諦めて帰ってしまった後、サウス・ノードは一人でとぼとぼと家路を辿った。胸中には怒りが渦巻いていた。

病気の母が眠りに就いたのを確かめて、サウスはこっそりと身支度をした。暖炉のそばにお湯を張った盥を置き、サウスは体を洗った。何度もお湯を替えて煤を擦り落とすと、サウスの肌はしだいに見違えるように艶つやになった。処理場のクリーナー・ヤムヤムから得ておいた石鹸は良い香りがし、湯の温かさで体はうっすら火照っていた。汚れを洗い流した髪を丹念に梳いていくと、サファイア・ブルーの髪には星の輝きがきらめき、宿った。

宣星会の幹部達は深夜の会合の最中に襲撃を受けた。怒号と喧騒がひとしきり続き、武装した構成員の足音が通路を走り回った。緊迫した一座の肝を破るように、扉が打ち開かれ、幹部達の前に美しい娘が入ってきた。純白のドレスをまとい、輝く髪の娘はまるで王女のような威厳で、手には剣を下げ、瞳は怒りに燃えていた。幹部達の背後からMr.UFOが現れ、行く手を阻むと、二人は切り合い、瞬時に激しく戦った。三度剣を交えて、三合目に少女の剣はMr.UFOを討ち留め、彼を倒した。

サウス・ノードは道路工事現場で誘導灯を振る間も剣術の心得を忘れたことはなかった。誘拐された娘が救け出されていくのを見送った後、ようやくになって宣星会の組員達が闖入者を追って身元を捜し始めたが、国中を捜し求めても美しい少女は見つかりそうになかった。煤塵にまみれて働いているときの彼女は、「まるで王女のような」「星のように輝く」娘を探す彼らの目には決して留まることがないのだった。

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    Acheron Archives
    katka_yg 2026/05/03 (日) 22:39:14 修正 >> 32

    月のノードの双子の姉の話は、このあと読み進めていくとどうも辻褄が合っていない。ここで喋っているノード(ノース)は姉妹ともどもいじめられた、と言っているが、後ではその母が姉のサウスは生まれてすぐ死んだと語る。姉妹二人で過ごしたような時間はなかったはず。

    シナリオの些細な粗なのか、少女ノースの思い出には架空の姉と暮らしたような不思議なところがあるのか……どっちにしても憶測でしかないので『ノースはそう言ってる』という意味でしか、記事には書かない。『ノースに姉はいなかった』と書くのは誰の気持ちにとっても嘘だ。

    月のノード - Acheron Archives Wiki*
    アンディーメンテ作品についての資料庫です
    Acheron Archives Wiki*

  • 15

    街明かりをあとに
    旅する僕らは
    暗やみの道を
    たどり続ける

    過ぎてきた世界の
    ざわめきは果て
    行く先にサインは
    現れて 消えて

    上の空 うつろな
    途切れて続く会話

    遠い夜明けをまだ
    知らずに彷徨う
    引かれ合う光の
    たえまない瞬き

    Acheron Archives
    katka_yg 2026/05/02 (土) 19:53:58 修正 >> 20

    そうだ、この歌のことをたぶんナイツ1の「挿入歌」と呼んでいて元は歌詞があったんじゃないかと。

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    近年のジスカルドさんを見ると、昔のこういうものに興味があると送っても本人は絶対そんなロマンチックな気にならないだろうし、そもそも憶えておられないと思う。だから、ユーザーにそんな興味があるくらいなら詩は自分で書いてみるとかね。これは当時、二十代前半くらいの人達だしな…。

    「夜にしか見えないもの」お題か。王女の齢の女の子が考えそうな、だよね。

  • 16

    『ガラテア』より、土地屋で購入する特殊効果のひとつ。遭遇するたびに【科学】が上昇するが、ダメージを受ける。
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