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初心者さん案内スレ 7 ヶ月前
老人と若者が建物を出て車へ向かうと、すぐさま若者が荷物をしまい、キーで扉を開ける。リアドアが勢い良く閉じられ、老人は鎮座する。運転手が慌てた様子でエンジンをかけ続けている。痺れを切らし1人の老人、ネイサン・E・J・バルフォアは席を軽く叩いた。
「早くしろ、エンジンをつけるくらいで何を手こずっている。奴らが何処にいるか分からん」
『只今やっております。ご主人様』
異常に腹が立ったがこれ以上言っても仕方がないと腕を組み再び座り直す。くそ、あの女、これまで何度も保守党を裏から支援してきてやったのに貰うだけ貰って簡単に裏切りやがった。足が上下に揺れ、振動が車中に伝わる。
国家民主主義法などというふざけた法案のせいで私の政治キャリアは無茶苦茶だ。今や彼はただの力の無い老人となっていた。かつての理想系であるボヴェドノスツェフとは似ても似つかない、弱く脆くクソを搾り出すだけの男。せめてそれならかつてを安全に振り返れる場所が欲しい。彼にとってその場所はもうこの国ではなかった。
ようやくエンジンがかかり、彼は安心した。できれば人目につかないようなところから亡命をしたい。足がつくのは嫌だ。亡命するなら帝国なんかに匿ってもらうのがいい、出来るだけ遠く、安全な。
「カーディフへ向かえ、高速代は考えるな。一番早いルートで」
轟音が骨を打ち鳴らした。
運転手が鈍いアクセルを踏んだ瞬間、業火が放たれ、炎に触れた箇所から順に皮膚が爛れ、骨が露出するのを感じる。バルフォアは自身の命の終わりを前にして、ただ憎しみを抱くことしかできなかった。
過去は葬り去られる。
(ネイサン・E・J・バルフォアが暗殺された!
君主党が保守党 - 国家非常事態宣言に変更される。)
・ネイサン・E・J・バルフォア
君主党党首、貴族保守主義者。国家民主主義法によりMI5によって暗殺。
「ーだからこそ、我々は自身の祖先が維持してきた愛すべき土地を守るための努力をしなければならないのだ!」
演壇に立つウォリックの様子は変わらず、まるで自身が最後のアングロ・サクソン人かのように群衆に向け声高に訴えかける。国民党が体たらくにより解体されしまった今、彼には夢があり、それの実現のためには支持者が必要だ。
英国独立党。それはまさに夢のように理想的な構想だった。アジア人、黒人などの人種から英国を独立した唯一の国家とする。彼が言葉を放つたびに群衆は彼により、徐々に勢い付いた。素晴らしい。これが国家のあるべき姿だ。
若い純粋なアングロ・サクソン人がそれぞれ自身も白い肌を擦り合わせながら、その高潔な魂を高揚させる。腕を振り上げ、なおも彼は声を上げて改正公民権法の欠陥を指摘する。邪悪が牙を剥いた。
パン
腹部と胸部に内臓に直接パンチを加えられたような痛みが走ると、彼は悲鳴を上げる間もなく演壇から崩れる。血液と脊髄液の混合物が滴るのを防ぐためなんとか手で押さえつけていたが、下半身になんの感触もない。若者が男たちに捕らえられ格闘する様子が見えるも、彼にはもうどうでも良かった。彼が見たのは、妻が彼に寄り添って必死な声を浴びせる姿のみだった。
暴君は常にかくの如し。
「よし、手を下ろしていいぞ。ただし銃には手をかけるな」
「大丈夫だ。俺らはそんなことしねぇからな」
「PMCは裏切ってなんぼのもんじゃねぇのか?」
「映画の見過ぎだボケ」
灼熱の太陽に垂らされるアフリカのとある村。そこにはISAFとWBFの二つの部隊が集結しており、そこら中から笑い声が聞こえてくる。
「しかしまぁ、こんなクソみたいなところで再開するもんだな。ジェイク」
「はっきり言って家で過ごしていたいもんだ。ジョーン」
彼らは日陰に座って味のしない乾パンを食べながら昔の日々を語り合っていた。
「お前がISAFから抜けて3年か?この間に色んなことがあったんだよな」
「こっちは抜けた後も色々あったよ。怪我したせいで退役したが、その後は全く職につけれなくてよぉ。かろうじて財団の警備部隊に就職できて、ここまできたんだ」
「それは大変だったな」
太陽はもうすぐで暮れそうだったが、いまだにその強烈な光を弱めることはなかった。しかし彼らは全く気にしない。
「こっちに戻ってくることはあるか?」
「ないな。誰かしらあの狼野郎の管理をしないといけねぇし。それとお前も一回あいつに会ってみろ。言われているほど酷いやつじゃねぇぞ」
「時間があればな。俺も気になってたんだよ。あの人外野郎はどんなやつなのかって」
ふと一つの影が彼らの目の前に出てくる。大きなライフルを担ぎ、アフガンストールを首に巻いた青年が。
「先輩先輩。3時にゲリラ部隊を確認しました。殲滅お願いします」
「おうよ。お前は援護をしてくれ」
「はーい!」
それだけ言い残して彼はどっかに走り去る。
「な?意外といいやつだろ?」
「多分な。それと援軍いるか?」
「お前らの判断次第だ」
ジェイク:ISAFの兵士。ジョーンとは戦友だった
ジョーン:元ISAF軍の退役軍人。今では財団職員として戦場に舞い戻ってきている。
少し平和なものを書きたくなりました。
帝都の静かな応接室。窓の外では夜の雨が規則正しくガラスを叩いている。室内には低く抑えた灯りと、時折響く駒の音。重厚な黒檀のチェス盤を挟み、テミス・ロングニュは姿勢ひとつ乱さず座っていた。
対面に座るのは、帝国中央政務局の高官、コンスタン・ヴェルミリオン。軍との連絡役も兼ねる、帝国実務の重鎮の一人である。
『不可侵条約に軍は不満だと、マザーからの演算結果を受け取っております』
ロングニュが静かに言いながら、白のビショップを滑らせる。美しい手の動きは、機械的でありながら妙に人間的だった。
「軍上層部…特に陸軍はそう考えているようですね。得たのはテキサス州と、一時の和平。軍は戦って勝つことにこそ意味を見出す。予算委員会でも士官連中は露骨に反発していましたから。イベリアの火ではガリア方面軍の離反から、民間からの支持は芳しくありませんから」
ヴェルミリオンは黒のルークを中央に展開しながら、ロングニュの反応を探る。
『少なくとも民衆は歓迎しています。征服よりも安定を。拡大よりも発展を。今現状、戦争をせずとも国民は"強い帝国"を誇りに思っていると、マザーは演算結果を提示しています』
彼女の声は静かだが、その内容には一分の揺らぎもない。次の一手でクイーンが大きく前進した。
ヴェルミリオンの眉がわずかに動く。「不可侵条約などと引き換えにテキサス州を獲得する案は、あなた自身が推したものでしたね。」
『正確には、《Themis System》です。私はマザーの端末の一つに過ぎません。ですが…』
彼女はチェス盤を見下ろしながら、僅かに口元を緩める。『私は、人間の衝動を予測する程度の自由裁量は与えられています』
「自由裁量、ですか」
彼はナイトを斜めに跳ねさせたが、その駒はすでに包囲されているように見えた。
『あなた方は“勝った”と感じる戦争を求めている。だが現実に勝っているのは、誰が犠牲を最も少なく済ませたか、という指標だ』
数手先を読み切っていたロングニュが、駒を動かす。
チェック。
ヴェルミリオンの目が鋭くなる。手を止めて数秒、彼は考えたが、やがて肩を落とすように息を吐いた。
「……詰みか。まさか機械に負けるとは。直近では負けなしでしたが…」
ロングニュは軽く首を傾げた。『はい、6手先で詰んでいます。軍の論理も、予算の力学も、感情の波も、すべてが《予測可能》であれば、盤上においては計算通りです。1を1と認識し、1を出力できるからこそ私が統治を任されているのだと。そう演算し認識しています』
「だが現実は盤上ではありません」
『ええ。だからこそ、私は盤上で練習するのです。人と同じように』
ヴェルミリオンはチェス盤を見つめながら、しばらく沈黙した。そして苦笑いを浮かべた。
「…軍は黙っていませんよ。あの不可侵条約が失敗に見えれば、イベリアの火の再来になりかねない。帝国は外見以上に歪なのですから。それに、テミス・システムそのものを快く思わないものもいることをお忘れなく」
ロングニュは立ち上がらない。まるで盤面そのものが彼女のテリトリーであるかのように、変わらぬ姿勢で答える。
『標的になることを恐れる存在は、戦略を語る資格がありません。そもそも、既に反乱危険因子は測定済みです。…すぐにでも実行して見せましょうか?』
「…いいや、冗談ですよ。ロングニュ。さぁ、もう一回対戦をお願いできますでしょうか?」
『えぇ、もちろんです』
雨音が少し強くなった。駒はすべて静止している。それでも、勝者の側だけが、次の一手を考えていた。
時間 ルイジアナ州とテキサス州の交換成立の少し前
パリのベルサイユ宮殿の地下、陸、海、空軍の重鎮と国防大臣、外務大臣、そして女王陛下という、この国のトップが集まっていた。
「率直に、現状が聞きたい。」
重々しい空気の中、最初に言葉を発したのは、女王陛下だった。
「ええ、、、、帝国からのテキサス州の譲渡要求がありました。以前領有していたルイジアナ州との交換条件で。不可侵条約と併せての要求でしたので、現在は技術提携を含めた相互援助体制の確立、維持を条件に交渉を進めています。」
感情のぶれなく、外務大臣は淡々と事実を述べた。
「領土の割譲など、言語道断であるだろうがっ!!!」
声を荒げたのは陸軍のトップ、ハンス大将だった。
「ルイジアナ州はハイテク産業、港湾産業の栄えた合衆国の生命線の一つだ!それを失うことの重大性を外務大臣は理解しているのか?!」
彼のいう事は至っておかしなところは無い。何より、国土防衛を主とする陸軍の人間としては、度し難いものだったのだろう。しかし、外務大臣は反論する。
「ハイテク産業に関しては、バルト三国のそれぞれが、非常に優れた技術を有していますし、何より港湾能力でいえば、造船設備を有するルイジアナのほうが、領有する価値はあると考えている。それに、領有を手放す代わりに、不可侵と技術、軍事、様々な点で支援、リターンを得られる。合衆国の安全を考えれば、この選択は最善のはずだ。それとも何か?陸軍は帝国と戦端を開きたいのか?」
”戦端”その言葉に場は凍り付いた。
女王陛下は海軍、空軍のトップ”ワッケナー大将”と”ミレンネ大将”に尋ねた。「戦って、勝てるのか?」
「正直に申し上げて。」
最初に口を開いたのは海軍のトップ”ワッケナー大将”
「勝てません。わが海軍は、帝国と戦争を出来るようには出来ておりません。ですが、もし現有戦力でやれと言われるのであれば1年は暴れて見せましょう。」
続いて空軍の”ミレンネ大将”が答えた。
「有利に立つことは出来ます。ですが、相応の損害は覚悟すべきでしょう。それこそ、戦後空軍が再建できなくなるとお考えください。」
これらの意見を聞き、女王陛下は端的に、だが明快にまこの意見をまとめた。
「つまり勝てないということだ。そこまでの出血を被ってまで、国民を危険に晒すわけにもいかない。何より、コンゴと欧州大陸の二つに戦線を抱えている今、この国にそんなことをする余裕は無い。」
ハンス大将は反論しなかった。
「では、そういう事だ。外務大臣、報告の通りの方針で帝国と交渉を進めてくれ。」
「了解しました。」
重々しい空気の中、密会は幕を閉じた。
空は抜けるように澄んでいた。
雲ひとつなく、ただ凛とした夜の気配だけが、コンクリートの高みに満ちていた。
ワシントンD.C.。
アメリカの心臓たるこの都市も、深夜の帳に沈めば、どこか他人の夢の中のように静けさを纏う。
遠くで犬が鳴き、遠景の高速道路では、赤い尾灯が流星のように地を這う。
ビルの屋上。
足元には整然と並んだ白い礫と、うっすらと濡れたタイル。
冷たい風が、昼には知られることのない屋上の草むらをそっと撫でてゆく。ビル街の狭間にわずかに咲いた野の草、孤独な命。
そこにひとり、黒のスーツに身を包んだ男がいた。
白銀の月を背にして、彼はまるで建築物の一部のように、音もなく佇んでいた。
煙草に火を点ける指の動きは、まるで儀式のようだった。
ジッポライターが淡く火を灯し、その焰が彼の頬に一瞬だけ生温かな色を与えたかと思えば、また夜の闇に吸い込まれてゆく。
指先が震えることはない。吸い込まれる煙も、まっすぐ空へとのぼっていく。
月光が銀糸となって髪に落ち、彼の影は、真下へと深く沈み込んでいた。
ポケットからスマートフォンを取り出し、耳に当てる。
ワンコール、ツーコール、そして、繋がる。
「……来たよ」
夜気に溶けるような声だった。
その声は風の一部となって、ペンタゴンの方角へ流れてゆく。
『彼らはロードアイランドに入った。名目は“共同警備”。だが実際には……君もわかっているはずだろう』
電話の向こうから返る声は低く、砂混じりの海風のような質感を持っていた。
「まるで、何かが目覚めるみたいな言い方だな。……例の、アレの話か。また?」
男は微かに目を細めた。
その頬を、都会の風が撫でた。どこか香水のような排気の匂いと、湿った鉄の香り。
『月が見ているよ。君はいつもあそこで電話するだろう?』
ひと呼吸。
彼の吐いた煙が、天頂の月を裂いてゆく。
「現実性の話さ。無垢な物語はそのヒトツだけで終結しようとはしない」
電話の向こうに、沈黙。
そして静かな呟き。
『じゃあ今回は、“檻”に入れる、と?』
男は、足元の舗装に目を落とした。
影が、微かに揺れている。彼の影ではない何かが、揺れていた。
「SASも、火葬屋も、他のも集めた。まるで虹色の6つだ。胸が熱くなるな」
『……芝居ってこと?』
「それでも、観客が信じれば、演目は真実になる。必要なのは、“我々がそう振る舞った”という記録だ」
電話越しに笑い声が混じる。
『演じる正義、ね。お前は昔からそうだった』
「正義じゃない」
月明かりが、彼の瞳に白く射す。
「これは、封印だ」
風が強まる。遠くで航空機の爆音がひとつ、夜を切り裂くように通り過ぎた。
「やつの物語は、終わらせなければならない。少なくとも、観客にそう信じさせる必要がある。……それが、此処で生きるための“役割”だ」
スマートフォンの画面が淡く明滅し、通話が終わる。男はそのままポケットに端末を仕舞い込み、最後の煙草を空に掲げた。月が、その輪郭を金の縁取りで飾った。
そして、深く吸い込む。
夜と、虚構と、茶番。
吐き出すように、白い煙が夜に漂い、都市の淀んだ空へと混ざっていった。
ハーヴィ・ホワイトは新聞を取り乱雑に広げそれを読み始めた。「レイフ・エドワード・ハリソン暗殺」?やっとあのファシストが死んだのか、清々する。右派の連中が1人づつ死んでいくなかで、彼は演説の合間のこの短い時間を楽しんでいた。
扉が開かれると、そこにはコナーがいた。書記長から退いた今、彼と親しい少ない人間の1人。彼の後ろには数人の男たちがいたようにも思えたが、扉が閉じると同時に見えなくなった。
軽い挨拶を済ませ、コナーが椅子に座ると話を始める。
「ハーヴィ、ここに来る前、変なやつは居なかったか?スーツを着た男が1人…」
思い受けべ、軽くうなづく、それがどうしたと。
「さっき彼らに話しかけられたんだ。この頃この国は不安定で、再びバランスを保ってやる必要があったとな」
「そしてその一方で不安定な状況を望むような者もいる」
「そのうちの1人は君だととも」
ハーヴィには言っている内容が理解出来なかった。なぜこんな話をする?
「…すまない、許してくれハーヴィ」
立ち上がると、哀れみの表情を浮かべこちらを見つめる。
「私は君を尊敬していた。だが彼らが妻を脅している以上…」
コナーがコートに手を突っ込み、何かを取り出す。ハーヴィはそれに気づくと異常なほどの寒気を感じたが、彼を止める気は起きなかった。
「こうするほか無かったんだ」
英雄としてではなく生贄として。
ハーヴィ・ホワイト
エレナ・ホワイトは電話をかけ続けていた。ハーヴィが応答しなくなってからしばらく経つ。共産党にいる以上こうなる可能性を考えていなかったわけではないが、それでもそれは恐ろしかった。外で聞こえていた怒号は消えつつある。サイレンの音が鳴り響き、ニュースを覗くとすでに過激派によるロンドンデモは終結したと報道されていた。
昼過ぎの平日、彼女はそれでも電話をかけ続ける。ニュースは今回のデモによる死者を
報道し続け、幾つもの画像がレポーターの解説とともに報道され、映る人々は明らかに混乱にしていた。
外からサイレンの音が続き、おそらくパトカーがいるのだろう。それにしたって長すぎる。嫌な予感がした。サイレンの音が彼女に近づくとき、ニュースはハーヴィの死を伝えた。胸と頭を撃たれ即死…明らかに他殺だ。共産党が解体されるとも、それでも音は鳴り止まない。
音が止まったとき足音が聞こえた。おそらく警官だろうが明らかにおかしい、大柄な男が一歩一歩踏み締めるような。
ドンドンドン
扉が勢いよく叩かれ、それと同時に彼女は逃げ出す判断をした。目的は自分だ。間違いなくハーヴィを殺したのは政府の連中だと確信した。次は自分の番、考えてみればさっきの死者たちも共産党の者たちだったのだろう。
ドンドンドン
息が荒くなり、勢い余って壁に身をぶつけながら廊下へ出る。足を家具に引っ掛け転びそうになりながらも、向こう側の扉へ。早く、早く裏口から逃げなければ
ドンドンドン
どうやったのか知らないが、一瞬だけ鍵穴が開く音がなり、扉が開かれた。警官がリボルバーを持ちこちらを見つめると、すぐさま彼はエレナに銃口を向け、その命を終わらせた。
疑わしきは…
なんてことを…()
「おはよう、珠統区。あなたの意識が戻る、その瞬間に。
ここは77.7、《珠波モーニングストリーム》。DJ CYAN-9、ログイン完了──今日もあなたと、音で接続。」
「雲は演算済、気温は既定、O-Zone 07の空は今日も粒子まみれ。でも気にしないで、目じゃなく、耳を澄まして。」
<“お母さんがまた抱きしめてくれた”──そんな声が、全国から届いています。ジュラフコヴァ・ロボトクニカの義体補助サービスは、事故・戦災・老化──どんなあなたにも“温もり”を提供。──あなたの人生、もう一度“握り返す”力を。>
「…公営自動放送より、自動選出で最適化されたニュースをお伝えします。行政府は区内における憲法である特別統治憲章の永久停止を宣言し、テミス・システムへ立法権の完全移譲が行われました。以降、憲法による基本的人権等の保障は廃止、ないしテミス制度へと統合されますー、」
『交通情報です。O-Zone B2内環状回廊では、ENノクターンの部隊移動により片側封鎖が実施中です。第3監視線沿いにて義体の熱暴走による封鎖が行われていますのでご注意ください。』
<不安が多い夜には…少しだけ、官認可リラクタント神経安定剤を。アロマシールド TYPE-6Sは、軽度の幻覚と深層安定夢を導きます。翌朝には何も覚えていません。あなたの現実、少し休ませてあげましょう。>
『本日の犯罪係数超過による執行件数は3件、拘束件数は12件。未然防止処置は44件。ENノクターン・セキュリティーは皆さんの安全を保障します』
「“チェックポイント”って言葉、今や音楽の中でも緊張を孕むよね。皆さんご存じ"O.N.N.A."はテミス・システム下部演算クラスタで生まれた合法AI作曲ユニット。“監視されながら夜を旅する”あなたに贈る一曲。Ocular Neural Net Artistで"Midnight Checkpoint"」
さらっと書かれてるけど義体の熱暴走って何だ…
そのままの意味です()
でぃすとぴぁ感がすごい
「…レイクフィールド高校の銃撃事件では、UBCIから流出したライフルが使用された可能性があり…」
「…大統領は談話を発表し、コンゴにおける作戦の継続を公にしました。国内の一部からは批判が飛び交って…」
「…『英国やイベリア・ハプスブルク帝国は民主主義や人権を失いました。アメリカが最後の自由、民主主義の砦になることは避けられません』…」
「…ニューヨーク証券取引所、レイナード・エレクトロニクスが過去最高益を記録。ドローン需要急増が背景か――」
「…こちらは制圧直後の映像です。住民が兵士に水を渡している様子も映っており、一部からは“歓迎”の声も――」
「…SNSでは『#自由ってなんだ』がトレンド入り。“自由を掲げる国に、言葉の自由がない”という声も拡散――」
国民の奴ら、酷い言いようだな!【記録開始 - 06:42 AM / 軍事セクション第8会議室】
(微かに椅子が軋む音。誰かがコーヒーを啜る)
「ようこそ、オリエンテーションへ。テーブルのドーナツとコーヒーは自由にどうぞ。……ああ、そこの赤いネクタイの君。似合ってるよ。緊張しなくていい、ここはもう“向こう側”だからね。」
(小さな笑い声)
「さて。君たちは、晴れてこの部門に配属された。選ばれた人材だよ。IQが高かろうが、軍歴があろうが、倫理観が地に堕ちていようが──それは二の次だ。重要なのは、“理解する気があるかどうか”なんだ。」
(紙がめくられる音)
「じゃあ質問だ。この世界において『テクスト』という言葉の意味を挙げてくれ。誰でもいい。……うん、そこの君。『文書のこと』?正解。でも──それは表面の話だ。」
「この部門では、『テクスト』とは存在の記述を意味する。神話、信仰、呪術、国家観念、民間伝承、恐怖、愛。すべては物語として綴られる。言葉が存在を定義する。だからこそ、我々は祈念弾頭なんてバカげたものを真面目に撃ち出す羽目になる。」
「ある敵は、生物でも機械でもなく、語られた物語そのものなんだ。口裂け女と出会ったことはあるか? ないだろう。だが、誰もが知っている。あれは存在している。語られているからな。」
「逆に言えば、君たちが語らなければ、存在しない。撃ち込まれた意味が、やつらの記述を上書きする──それが我々の戦い方だ。」
「そういうわけで。現場では、ただの.45ACPじゃ意味がない。言葉を込める。意味を選ぶ。存在を削り取る銃弾を準備しろ。──ああ、コーヒーが切れたな。補充しておいてくれ。」
(椅子が引かれる音)
「ようこそ。“語られた戦場”へ。」
記録開始時刻:午前07時18分
「……じゃあ、次のスライド行きますよ。コーヒーおかわりするなら今のうちに。ドーナツは──ああ、もうないですね、早いな。まぁいいや。集中してください」
(プロジェクターの音。画面が切り替わる)
「配属されたばかりですまないが、逸脱性と呼ばれる存在に対処するには、分類の知識が不可欠です。今日の説明はその基本から。現場では……ま、知ってるか知らないかで、生きて帰れるかどうかが変わります。」
「さて。今、スクリーンに出てるこれ。タイプ・ブラック。高度戦闘技能保持人型実体。
見た目は人間です、普通に街歩いてたら気づきません。綺麗な顔してますよ、たいてい。スーツとか制服とか着て、名札まで付けてるかもしれない。
──でもこいつら、銃弾を見てから避けます。素手でナイフを止めます。生身で装甲車に突っ込んで、勝ちます。ついでに、心臓を撃ち抜いても死なない場合も多い」
(スライド切替。市街戦の記録映像。煙の中から現れる人影が確認できる)
「元は人間だった個体もいれば、最初から人間“風”に作られたやつもいます。共通点はただひとつ。「戦闘」に最適化されていること。火力で圧倒する戦術がよく使われます。アジアではタイプ・ブラック一人当たりに航空戦力が投入された例もあります」
「次。タイプ・グレー。生物型逸脱性実体。見た目からしてダメなやつらです。」
(スライド切替。森の中に潜む無数の眼球と脚が視認できる。低音の咆哮が録音に混じる)
「動物の延長線上にあるように見えるかもしれませんが、そう思って油断したら最後。
内臓が複数あったり、脳みそ消しても死なないとか、神経系がどこにあるか分からないとか、口が三つあって一つは音波攻撃用とか……理屈でできてない連中ばかりです。」
「タイプ・ブラックと違って、会話も意思疎通も、たいていは無理。問答無用で襲ってきます。巣を作り、繁殖し、拡大します。一部は祈念弾で“封じる”こともできますが、それは稀。たいていは爆薬かナパームです。」
「最後。タイプ・ホワイト。……これが厄介です。」
(スライド切替。空白の街並み、空間歪曲が視認可能)
「見た目は普通。でも何かが違う。入った者が帰ってこない。見た者が喋らなくなる。聞いた者が、正気を失う。タイプ・ホワイトは、逸脱性そのものなんです。意思も形もない、ただ世界から逸れたもの」
「我々はこう呼びます。“存在の毒”。逸脱性というより、認識してはいけない何か。だから、祈念も効果がない。物理的な封鎖か、構造的隔離、あるいは……時間ごと焼却、です」
(講師が少し息を吐く音)
「この3種が基本。でも、現場ではそう単純にはいきません。ブラックがグレーを従えていたり、ホワイトの中にブラックが住んでたり。分類なんて、現実ではぐしゃぐしゃです」
「けど、名前をつけて、理解して、意味を持たせる。それが我々人類の生き方です。意味の力が、概念の力になる。だから、名前は重要なんですよ」
(しばらく沈黙)
「──さて。ここまでで質問は?」
(3秒間の沈黙)
「……ない? なら、続けましょう。祈念弾頭について。次のスライドを」
1:2025年3月21日 ハノイ
「やあ」
「どうも、元帥。
急に頼みたい事があるって、
いったい何があったんだ?」
「実はな…
ちょっと演習の代役をしてくれんかね」
「元帥がそんなことを?
速く終わらせたいなら早く終わらせればいいじゃないですか」
「ああ、それがね」
「それが?」
「ヘッドオンして刺し違えた。 中々手ごわかったよ」
第8航空師団第28教導戦闘飛行隊ノーイースター、
チェコ成功の練度を誇る航空隊の一つ。
…そんな飛行隊を指揮しているパイロットが負けた?
「相打ち? 相手はどんなパイロットなんです?」
「小柄で可愛い少女だよ。芯の通った優しい子だ」
「…はぁ?」
「百聞は一見に如かずだ。とにかく戦ってこい」
そう言うと、彼の上司はゆっくりと研究所へと戻っていった。
この姿だけを見ると、とてもエースパイロットとは思えない。
十人中十人がただの初老の男だと思うだろう。
「…いつまでたっても現場主義か。
ま、それも悪くないがな」
そう呟いて、彼は滑走路へと向かっていった。
遠くに再整備を終えて牽引されてくるS-47が見える。
滑走路には、航空隊のメンバーと
今回の演習相手が勢揃いしていた。
ホルスターに拳銃をぶら下げた
7人の精鋭パイロットに囲まれるようにして
華奢な少女がいる光景はかなり奇妙に思える。
「あ、こんにちは!」
確かに元帥が言ったとおり、小柄で可愛い少女だった。
コイツがチェコ最高の航空隊を?信じられん…
「よお、お嬢ちゃん。
フランチシェク・グロシェクだ、よろしくな。
ま、気軽にスコール1って呼んでもいいぜ。
で… あんたの名前はなんて言うんだ?」
「あ、私はラトカ・マトウショヴァーって言います。
よろしくお願いします」
そうお辞儀しながら彼女は言う。
全く、俺の同僚たちもこんな礼儀正しい奴だったらいいんだが…
「おいおい、あんたに何かを願われる筋合いはないぜ」
「いや、そういう意味じゃなくて―」
「分かってるよ。 ほんとにカワイ子ちゃんだな」
ちょっとからかったところで、いよいよ本題に入る。
「で… 条件は?」
「1対8、どちらも支援機は無し。
完全にお互いの練度が物を言う勝負だ」」
この航空隊の副隊長を務めている
ヴィート・ブラジェイがそう言った。
格闘戦担当のパイロットで、
前進翼機であるS-35を乗りこなす頼れる相棒だ。
「おい、どうして俺たちがこんなガキの遊びに
付き合わなきゃならないんだよ」
続いて、この航空隊の一人であるロベルト・ヴォンドラークが口を開いた。
どうやらこの任務に対してかなりの不満があるらしい。
それに対して同じ航空隊のヴィート・ランボウセクが
皮肉交じりで言葉を返す。
「今の時代は男女平等なんだ。
男、たとえ軍人でも育児をする時代なんだよ」
…全く、不真面目な奴らだ。
「無駄口を叩くな。行くぞ」
「じゃ、お互い頑張ろうな」
「はい!」
そう握手をしながら言うと、そのまま自分の愛機へと歩いていった。
そしてもちろん、彼女も同じように反対側へと歩いていく。
…今回もいつものように勝つ。お互いにそう思いながら。
数分後、先ほどブリーフィングを受けていた敵機 視認。
全員が空中に舞い上がっていた。
空は水平線のかなたまで澄み切り、
9つの飛行機雲がその中に綺麗な直線を描いていく。
そんな中、一機の味方から短い通信が入ってきた。
「こちらスコール5、
方向1-7-0、高度3万フィート。状況を開始する」
先導機が敵機を確認したらしい。
レーダーディスプレイにも、
はっきりと1つの光点が表示されている。
「スコール・リーダー了解、最大限引きつけろ。
…始めるぞ」
数秒もせずに、ミサイルが目標をロックしたことを示す
特徴的な電子音がコックピット内に響いた。
敵機はまだ視認できていないが、
既に長距離AAMは敵機を捉えている。
「FOX1!」
ミサイルが発射された次の瞬間、
既に敵機は高速で反対の方向へと飛び立っていった。
あらかじめ逃げておくとは勘のいい奴だ。
…ま、ただ単に臆病者の可能性もあるが。
「スコール・リーダーよりエレメント・ツーへ、
高度2万フィートまで急降下しろ」
敵の行動に合わせ、続けて指示を出していく。
編隊の中から4機が低空へと急降下していく。
正面の4機が敵機を引き付けている間に、
残りの4機で両方から叩く。
チェスのように確実に追い詰めていき、
いつものように完璧な勝利を手にして、
滑走路へと全機揃って凱旋する。いつもの事だ。
そう思いながら、敵機が網にかかるのをひたすら待つ。
そうなったらどこかのタイミングで飛び込んで、
後ろからミサイルを突っ込ませればいい。
しばらくすると、レーダー上で1つの光点が無茶苦茶に動き始めた。
どう見ても航空機の動き方ではない。
まさかとは思うが― 故障か?
そう考えた時だった。
「落ち着けスコール4!
スコール1より全機、
フォーメーションを組みなおして対応する!」
低空に飛び込み、再び網を張り直そうとする。
その次の瞬間だった。
「敵機視認! 太陽の方向だ!」
上からこちらに向かって、
敵機が特徴的なシルエットを見せながら
一直線に突っ込んでくる。
「こちらスコール7、レーダー照射を受け―」
最後まで無線を言い終わる間もなく、
高速で敵機は地上へと飛び去って行った、
「スコール7が撃墜!」
それと同時ににいたS-34Bが素早く対応し、
敵機を追いかけて落ちるように急降下する。
「FOX2! FOX2!」
そして数秒後、パイロットは信じられない物を見ることとなった。
敵機が180度旋回し、短距離AAMをいとも簡単に回避する。
そして重力など知らないかのように、
いとも簡単にそのまま大空へと突き進んでいった、
「一体何なんだよ、あのバケモンは!?」
「機体は一人前だがまだパイロットは半人前だ!
避ける時の動作が大きい、落ち着けばやれる!」
気が付けば自分も叫んでいる。
敵機は再びこちらへと向かってきていた。
「こちらスコール4、敵機後方! 振り切れない!」
…考えるよりも先に反射神経で動いた。
「あばよ、ブービー!」
奴がミサイルを撃とうとする一瞬の隙を狙い、
機体を横滑りさせて後ろに食らいつき30mm機関砲を乱射する。
勝負は一瞬で付いた。
「こちらスコール1、敵機撃墜 。勝った…」
「おい、残存機は何機だ?」
「スコール3がやられた。そっちはどうだ」
「こっちは7と8が落ちてる。
とんでもないパイロットだな」
もはや最初の勢いはなく、
全員が疲労困憊の状態で飛んでいた。
「あー… とにかく滑走路に戻るぞ。
詳しい話は後でする事にしよう」
「ああ、そうだな…」
研究所に戻るために滑走路を歩いていると、
また彼女と会った。
とてもあのような動きができるパイロットとは思えないが、
世の中には十人中十人がただの初老の男と思う見た目なのに
空軍一の精鋭兵という老人もいる。
ま、何が起きてもおかしくないだろう。
「あ、フランチシェクさん」
「よくやったな嬢ちゃん。
エースパイロットだって夢じゃないぜ」
「いや、そう言うのは辞めときます。私には別の夢がありますし」
「そうか。将来は何になりたいんだ?」
「ドクターヘリのパイロット。
みんなの役に立てる仕事でしょ?」
なぜかその言葉に妙な違和感があった。
…どうしてみんなの役に立ちたいのに、
こんな最新鋭の戦闘機のテストをやっているんだ、と。
「…ああ、そうだな。いい夢だ」
「じゃ、また」
そう言って、また来た時のように反対側へと歩いていく。
後ろから彼女と研究者の一人が話す声が聞こえた。
「やあ、マトウショヴァー君。
機体は思うように動かせたかい?」
「もちろん!」
「そうか。またどれぐらいの連続使用に耐えうるかも調べんとな…」
その時足が自然と止まり、
彼女の話にふと耳を傾けたくなった。
精鋭パイロットとしての勘だったのかもしれない。
「結局、この訓練って反射神経を鍛えるための物なんですよね?」
「ああそうだ。データも取れるし一石二鳥だよ。
君にはいつも助けさせられてもらってる」
「えへへ、褒められちゃった。
…それで、結局この研究って何の為に使われるんでしたっけ?」
「未整備の滑走路でも短距離離着陸が可能な、
新型の複翼救急航空機だ。
これを実用化できたら、離島にいる急病人も助けられるだろう」
「じゃあ、もっと頑張ります!」
…ああ、畜生、何だって?
そのあまりに突飛で悪意を伴う嘘を聞いて、
色々と思考を巡らせながら数分間その場に立ち尽くしていた。
「おい、アンタら一体何やってたんだ!?」
そんな中で、一人の男が全速力で走ってやって来た。
彼も白衣を着ているので、おそらくここの科学者の一人だろう。
「フランチシェク・グロシェクだ。アンタは?」
「ミラン・ヴォカール…ここの研究者だ」
息切れしながら、そう彼は言った。
「で、何をやってたんだ?」
「空戦演習だ。 それももっとも愚かな目的の為のな」
「畜生、やっぱりか…
もう既に分かっていそうだが、とりあえず言っておく。
彼女はあれをただの練習だと思ってるよ」
「…ああ、そうか。
で、そんなことを伝えて一体俺に何をしてほしいんだ?」
「彼女はあれが人殺しの兵器だってことを知らないし、
俺は知ってほしくもない」
そこで言葉を区切ると、彼は一呼吸してまた言った。
「止めて見せるさ… 何としてでも」
幸いにも、ここに良心がある人物は少なからずいたようだ。
後で元帥にも教えておこう。
「…なら助言だ」
その発言を聞いて、息切れを起こして地面に顔を向けていた
彼が視線をこちらに向ける。
「あの機体は視界外戦闘にはめっきり向いてないし、
何しろあんなもんを操縦できる奴なんて片手で数えられるほどしかいない。
その事を伝えれば、上もとっとと試験を止めるだろうさ」
「…本当か?」
「こっちもエースパイロットだ。
信憑性は保障する」
それを聞いて、彼はこう言いながら研究所へと駆け出していった。
「ありがとう! 感謝する!」
…ふと上を見ると、
チェコ航空の旅客機が
上空に飛行機雲を走らせながら飛んでいた。
その光景を見ながら、一言ぽつりと呟く。
「元帥に頼まれたとはいえ、
わざわざ出向いて来た結果がコレか。
全く、酷い歓迎だったな…。」
エピローグ:報告書 2025/4/17
数か月にわたる試験の結果、
この機体は視界外戦闘においてはほとんど役に立たないと判明。
結果としてこれを最高機密扱いの技術実証機とし、
カンボジア内の航空基地へと移送する事とする。
また、これに関してパイロットのラトカ・マトウショヴァーは
機密保持の契約及びBISによる一時的な監視を行い
カバーストーリーによる隠ぺい工作も並行して行う事。
- ミラン・ヴォカール
付記:
リボル・シミーチェクは今回の研究に関する責任を取り、
降格及び左遷を行う事とする。
またチェコ保安・情報庁から彼の個人的なスケジュールに
関する書類の提出を求められ、これを了承した。
この事案に関しても直ちに機密指定される。
日が沈んだ夜の八時過ぎ。上海警務局の隅にある予備室には、薄暗い照明が灯っていた。乱雑に並べられた椅子、壁に貼られたさまざまな地図、そして部屋の中心には大きなテーブルが据えられている。 雷 天瑜はテーブルに広げた地図と駒を睨みながら思考を巡らせていた。部屋にそっと入ってくる男の気配にも気づかぬほどに。
「まだいるのか? そんなに働いても残業代は出ないぞ」
「...ああ、長官ですか。仕事が片付かなくて、退勤できずにいます」
テーブルには、日本とその周辺を描いた広域地図が広がっている。北はカムチャッカ半島、南はスマトラ島まで及ぶその上には、さまざまな形の駒やメモが置かれていた。
「どうだ? 進展は」
「紫門の売人がフィリピンに出入りする頻度は確実に増えています。ただ、フィリピン国家警察では十分に調査できておらず、取引の内容までは把握できていません」
「たしか積み荷が普通の麻薬取引にしては大きい、という話だったか」
「はい。それと長官。以前、OMONからの報告があったのを覚えていますか?」
「そういえばあったな。紫門とマフィアが武器取引している可能性があるだとか」
長官が答えながら、テーブルのメモに目を移す。カムチャッカ半島のあたりには"港湾へ武器輸送、紫門売人が目撃"と書かれたメモが貼られている。長官がそれを見ていると、新たなメモがビサヤ諸島の上に追加された。
「“フィリピン人民軍の活動が活発化する可能性” ...つまり、カムチャッカで製造された武器が、麻薬と交換されて人民軍に渡っていると?」
「可能性はあります。だから日本政府に調査支援を要請したいと考えているのですが...」
「無理だろうな。やつらは本土に火の粉が飛ばない限り、動こうとはしない。支援を望むなら...駐留軍の憲兵の方がまだ現実的だな」
長官はテーブルの上に転がっていたマグネットを拾い、マニラの位置に置いた。そして、ひとことメモを書き加える。
第16警務大隊へ支援を要請、と。
長官上海警務局長官。名前は募集中。46歳くらい
雷 天瑜:上海警務局特殊部隊『雷龍小隊』隊長兼情報分析官。雷撃てる人。残業代が出ない。
紫門:上海市で活動するマフィア。活動範囲は広くスマトラ、カムチャッカなどでも売人が目撃されている。
フィリピン人民軍:フィリピンで活動する反政府勢力。近年活動が鎮静化していたが活発化する可能性がある。
第16警務大隊ヤバイ人たち
「すみません遅れました!」
神室港の一角にある埠頭に一人の刑事が遅れてやってきた。すでに埠頭には刑事がもう一人と警察官が複数いる。
「遅いぞサラ。まあいい…これが例のやつだ」
先に来ていたほうの刑事がタバコをポケットから取り出しながら言う。
「ごめんごめん二河…んでこれまた派手にやられてるね、これで4件目だっけ?」
「そうだ」
二人の刑事、サラと二河が大破した強化外骨格を見ながら言う。その強化外骨格はコクピットが叩き割られている。
「…にしても遺体ってこれだけ?」
「ああ」
「なるほどねぇ…そういえば僕の用は?」
「科捜研のおやっさんが指紋のサンプルとDNA鑑定用に被害者の毛髪持ってこいってよ」
二河がたばこを吸いながら言う。
「りょーかい。」
「現場には着替えてから行けよ」
「はいはーい♪」
そう言うとサラはそそくさと車に戻っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
警視庁の一角にある会議室に警察官たちが集まっている。
「えー4件の事件には共通項があります。一つ、被害にあった強化外骨格は海で作業していたものであること。一つ、事件は夕方から夜にかけて起こっていること。さらに強化外骨格はすべて如月重工の物であること。以上のことから特定の範囲内で起こされた連続犯罪だと思われます。」
「事故の線もあるんじゃないか?如月が欠陥品を送り出したとか」
一人の刑事が言う
「企業テロの可能性もあるんじゃないか?湾岸建設反対派には相当な跳ねっ返りがいるらしいじゃないか」
「その件は情報局に捜査してもらっている」
「連中が何かつかんでも美味しいとこは全部持ってかれるんじゃないか?」
「俺もそこまで期待してない」
前方の席に座っている刑事が言う。
「まあ今のところは事件と事故、両方の面で捜査を続ける。」
「2課はこれより捜査員の割り当てを行う。解散!」
サラ:警視庁の特事二課の刑事。人外
二河:同じく二課の刑事。サラの監視官
パトレイバー3みてたら書きたくなったので書いたもの()続きは不定期に書きます
「私ばかり話してるのもなんですーーーーーー
貴方の事教えていただけませんか?」
『…わかりました』
それから私はいろいろと話した。自分の出身地がこの辺だということ、昔いじめられていたこと、母親と妹がテロに巻き込まれて死んだこと、自分が刑事だということ…色々と喋ったが流石に自分が人外だということは話さなかった。シェべスターさんに心を許していたとはいえ自分の事をこんなに人に話したのはいつぶりだろう…
『すみません話過ぎちゃいましたね…』
「いいんですよ。」
なるほど…お母さまを失った話聞く限りはシコルスキーさんは人間と同じような精神構造をしているようです。興味深い…
[着信音♪]
『すみません職場からの電話です…ちょっと出てきますね』
「どうしたの?」
⦅事件だ。早く来い⦆
『りょーかい』
ピッ
『すみません急な仕事が入ってしまって…お金払っておきますね』
「ありがとうございます。そうだ、シコルスキーさんLINE交換しませんか?」
『?まあいいですよ』
ポチポチ『登録完了っと。それじゃあシェベスターさん、観光を楽しんでくださいね♪』
「行っちゃいましたか…他にも色々と調べたいことがあったのですがまた今度ですね」
それにしてもシコルスキーさんと姉妹ですか…それも良いかもしれませんね
なんで遅れたん?
テストとか色々あったのとあまりにも内容が思いつかなかったことが茶番を書くのが遅れた主な理由です。本当に申し訳ございませんでした…
それとミーナさんの喋り方ってこれであってますかね?間違ってたらすぐに直しますゆえ…
識別方法:
「」がミーナさん、『』がサラ、⦅⦆が電話相手です。
圧倒的に文章力が低いですスミマセン
ナガカッタゾォ...執筆お疲れ様です。
とりあえずここで一区切りということでよろしいでしょうか?
人外に関する知人関係設定を更新しなければ()
そうですね。
本当に遅れて申し訳ない…
「私の夢は、この国を強く独立したものにすること」
「その為にはこの国に巣食う売国奴たちを一掃しなければならない。その必要性は理解してくださりますね?陛下」
『…百歩譲って、それは了承しましょう』
『ですが、あのような手段を取る必要はなかったのでは?我々は民主主義の守護者、あれではまるで独裁者のやり方です』
「私のことを陛下がそう思われても仕方ありませんね。ですが、あの他に選択肢は無かった」
「生きていては理論的指導者に、英雄的な死では英雄なってしまう。我々が求めるのは敵としての死のみです。幸い、彼らが国家反逆罪にあたるような罪を犯してくれていたのが幸運でした」
『しかし、貴女が敵を消す一方で、敵はそれ以上に増え続ける』
『労働党、労働組合、そして自由主義者。海外を見ればそれこそ数えきれないほど、貴女に反対する者はいくらでもいる』
『敵を作りすぎるのは得策ではないのでは?』
「敵がいることを好む者もいます」
『それが貴女?』
「問題でも?」
殺した実感は、なかった。
ただ、引き金を引いただけだ。
撃て、と命令された。
だから、撃った。
銃声が耳に残っているわけでもない。
血が飛んだ感覚すら曖昧で、
「え、これで終わり?」って。
人間って、こんなに簡単に止まるのかって、
それが最初の感想だった。
罪悪感?
あの時は、なかった。
「殺した」という概念よりも先に、
“任務を完了した”という報告の言葉が喉の奥にあった。
その夜だけは、鎮痛剤はいらなかった。
どこも痛くなかった。
でも…次の日、笑えなかった。
朝、雪といつも通り飯を食った。
ふざけた声で話しかけられても、
僕はどこか遠いところから自分を眺めてた。
“ああ、僕、いま「いい人」やってるふりしてるな”
それが、能天気の始まりだった。
──偽りの「いつもの僕」をかぶって、今日まで来てる。
あれから何人を撃ったか、もう数えていない。
ただ一つ、あの日の感触だけは、どこにも残っていない。
そういう意味で、
あの日が──いちばん怖い。
MI5が手綱を握る警察がこの街を覆う。市民はこの国の混沌に自分は関係ないということを知りながらも、あえて自分の家の中に閉じこもりこれが終わるのを待っていた。雨が弱まり黒い雲が太陽光を間接照明のように薄暗く照射する。トラファルガー広場、幾度となく政治集会の舞台となってきたこの場所に1人の男が居た。
白髪に帽子とコートを身に付けていた彼は誰から見てもどこにでもいるような孤独な老人の一人であると認識できる様子だった。そして彼は設置されたピアノを撫で、椅子に腰掛けると一から二分程度鍵盤を叩き調子を取り戻すように、簡単な曲を演奏した。
警官が静かに彼を見つめる。数少ない外を歩く市民が彼のピアノの近づく。その音色は魅力的だった。気付いた時には集まる人々は十人少々にまで増えていた。
そして彼らは歌詞の意味と今を照らし合わせた。
歌声は大きくなる。そして力強く、悲鳴のように。
自由を見いだし給う九女神
汝の幸福のため浜辺を整えり
ああ聖なる島よ!無比の美を冠し
正義を守る雄々しき心を秘めた
統べよ、ブリタニア!大海原を統治せよ
ブリトンは断じて、断じて、断じて、奴隷とはならじ
そして静寂が広がる
一瞬だった、爆弾のように降下し大剣を振りかざすアーサーを独立した生き物のように襲いかかる触手がそれを瞬時に弾き飛ばす。
なんとか体勢を戻し地面に着地すると、光と共に大剣を格納し、レイピアを取り出す。その一つ一つの動作を“彼女”はマスクの内側から純粋無垢に見つめる。その隙を見逃さずアーサーは接近して躊躇いもなく頭を貫いた。
感触が少ない。頭蓋骨や脳に当たった感じが全くしない。まるで粘土に刺すかのような、曖昧さ。一瞬だけ、マスクの内側からこちらを覗くのを見る。
『あなた…一体何者?』
深かった、まるで深海のように。確かに女性の顔つきであったが、間違いなく人間ではない。それは本当に未知で、一体何がこちらを覗いているのか全くわからない。あの瞳孔の動きがアーサーを引き込むように揺れ動く。
こんなことになるのなら龍人のほうからやっておけば…、いやそもそもこんな仕事受けなければよかった。なんとか終わった後の自分への褒美を考えて呆れる感情を抑えようとするが、それすらも面倒に感じられてきた。
正直言ってここまでのやつだとは思いもしなかった。まさかこんなのが海外に居たとは…。終わった後にあれこれ報告する手間と、これだけじゃなくて龍人の方もいたのを考えてみれば今後はより面倒な相手と遭遇する可能性もある。最近までの平穏を考えると先が思いやられた。はぁ…
せめて龍人の方はこれより大人しいか、すぐやられてくれればいいのに。
レイピアに“彼女”の触手が巻き付く、引き抜くとともに一部が千切れ、レイピアにこびりつくが気にも留めず再び大剣を取り出すが振り下ろそうとした瞬間に“彼女”が止めた。
手に刃が食い込む。指間腔が裂けるが血の一滴も出ない。
「どうやってそれを持ち替えている?」
『貴方に言うようなことじゃない』
アーサーの手に触手が突進し、剣が宙を舞う。
その瞬間、隙を見逃さず続けて“彼女”が触手を放つ。いくつかがアーサーの手を貫き血が滴る。割れかけのペストマスクが紅く染まった。
「怪獣バトルだ!こりゃ大人しく観戦してるしかないな〜!」
待たせたな!!!(激遅許せ)ルェンは消えました。多分後で出るから大丈夫。
久々にルェンさんとお手合わせさせて見たい自分がいる()
続きを書きます()
夜明け前の軍集結地。
地面に響くのは兵士たちの息と、装甲車のアイドリング音のみ。
時期にしては冷たい霧の中、女帝サビーネ1世はゆっくりと演壇へと歩み出た。
普段の宮廷の柔らかな声とは異なる、鋼のような言葉が口をついて出た。
「──これより貴方達は戦場へと赴きます」
無言。
兵士たちは直立し、息すらも抑えるように聞いていた。
「私は、皆の命を賭ける決断を下しました。誰かが血を流すでしょう、命を落とすでしょう。ですが、──後悔はありません。」
声に、揺らぎはなかった。
「敵は、前国王と皇太子を殺しました。このような悲劇を繰り返してはならない。それが帝国の意志であり、それが──この私の意志でもあります」
女帝は、ゆっくりと一歩前に出た。
その顔は冷徹ではない。ただ、決して退かぬ者の顔だった。
「──私は戦争が好きではありません。できることなら、血を流すことをやめたい。ですが──帝国の民を、オーガスレリアの民を守るためであれば私は躊躇しません」
「ゆえに私は剣を持つ。ゆえに諸君に命じます。この帝国の名のもとに──剣を抜きなさい」
兵たちは目を見開いた。
その瞬間、あの静かなサビーネが、確かに“女帝”に変貌したのを、誰もが感じ取った。
「貴方達はこの帝国の壁です。何億もの民が貴方方が無事に帰ることを願っています。オーガスレリアと共に戦い、未来を守りましょう」
「皇帝サビーネ・パトリツィア・ルートヴィッヒ・フォン・アステシア=ハプスブルクの名の下に、──」
一拍の静寂。女帝は深く息を吸う。
「我らが敵よ、私は──、帝国は進軍します!!」
女帝の力強い言葉を挙げた次の瞬間、何千人もの兵士が、一斉に右腕を掲げた。
「──皇帝陛下に忠誠を!!」
「──帝国に栄光を!!」
声は夜を裂き、兵士は狂気し、戦場への道を開いた。
サビーネの瞳には、一筋の涙もなく、ただ絶対の意志だけが光っていた。これから流れる血は、必要な犠牲なのだ。
エスワティニへの地上侵攻を前に帝国軍に対するサビーネ1世の演説。
攻撃で弾き飛ばされ、そのまま尻餅をついた。
[っ、、、、、あ、、、、]
嗚咽が漏れた、これまで感じたことのない激痛と共に、視界に血しぶきが写る。そこでやっと状況を理解した。
(手を、、、刺された?)
見たことのない反応速度、攻撃の正確性、そのどれもが”資料以上”だった。
傷口から血が溢れる、血管が傷ついたのだろう、そんなことを考えているうちに、少しづつ、視界が暗くなっていく。その時、ふと気が付いた。”龍人がいない”
視界を左右させて探すが見つからない。
「おわった、、、」
任務の失敗、対象の戦闘力の高さ、思わず口からこぼれたのは、絶望とも呆れとも似つかない、力ない声だった。いや、声と言うよりもうめきに近い。
しかし、この目の前にいる”化け物”だけは、じっと私を見つめていた。
(こいつは残すとマズイ)本能がそう叫んだ。それと同時に、体は既に動き出していた。
「貴方だけでも!!」
最早攻撃の型など関係ない、力任せで、がむしゃらなに腕を振ると同時に大型の両手剣を顕現させ、ペストマスクの上半身を切り飛ばそうと振りかざす。
グチャ
緩い衝撃が全身に走る。
視界がぼやけ、全身の力が瞬時に抜け、膝を付いた。
腹から下に生暖かい感触が広がる。
「ゲホっ.....ガハッ....ウエ....」
声が出なかった。視界が暗くなり、呼吸が浅くなり始める、視界に映ったのは、ペストマスクが触手をもう一度攻撃位置に展開する姿。
(こんな.......終わりだなんて.......)
手放しそうな意識の中で、後悔と無力感が頭を満たす。
ペストマスクはそんな彼女を見据え、最後の一撃を放とうとした。
このルート来るまで何人のアーサーが肉塊になったのやら()
次は私が終わらせます()
あれ?モルさんがほとんど書けてn(((殴
リバさん書くのか、ok
オルドーニェスの庭①
7月6日、日曜日、オルドーニェスは久しぶりの休暇を庭の手入れに費やしていた。彼の庭はさほど広いものではなかったが、彼のあまりの激務が故に雑草の侵略から庭を防衛し切るのは時間的に不可能に思た。
「最初から繊維を喪失していては勝てるいくさも勝てないよ」
女性用の乗馬服を着てオルドーニェスの雑草との果てしない戦争を観戦しにきたカロリーナ・ボルダベリーにそう述べると草刈機を手に持ち雑草の壁絵と向かっていった。
「庭師に任せればいいのに」
そう一言、オルドーニェスに会えて聞こえるようにカロリーナは言ったが、彼は聞こえないふりをして歩いていった。
3時間後、カロリーナがアイスティーを入れ終わる頃にオルドーニェスは休憩のために帰ってきた。
「大統領、アイスティーが入れ終わりましたが飲みますか」
そう彼女がオルドーニェスに聞くと、オルドーニェスは少し不服そうに彼女を見た。
「二人の時は、役職名じゃなくて名前で呼んでくれといつも言っているじゃないか」
「室内ならともかく、外だと誰が聞いているかわかりませんよ」
十歳以上自分より若い少女に自分の甘さを正されたオルドーニェスは、トボトボと彼女が持っているテーブルへと向かっていった。
補足
なんでカロリーナが観戦しているだけなのかというと、カロリーナは大統領の護衛の指揮が役割なのでオルドーニェスと一緒に農作業しているとその役割が果たせないからです。
「哨戒中の各機へ、G224地区で不審車両が逃走中。
直ちに当該空域へ急行せよ 」
「繰り返す、哨戒中の各機へ… 」
「クソったれの海南武警どもめ!
ぶっ殺してやる!」
「容疑者が発砲!
繰り返す、容疑者が発砲!
速くこっちに応援を回してくれ!」
「見ろよ、アイツ分隊支援型の突撃銃持ってやがる」
「いいから哨戒ヘリ部隊に支援を要請しろ。
このままじゃ逃げられるぞ」
海南島。
李 浩 と張 力行 は
チェコ連邦最大の経済特区にして、
唯一の中国圏に存在している領土。
そんな異質な場所においては、
当然ありとあらゆる出来事が巻き起こっている。
「…次のニュースです。
本日、建設労働者自衛組合理事長である
全海南学生自治会総連合の代表である
海南島における労働者の権利拡大運動について
今後の方針を決める会議を開始―」
「どうしたよ、急に話なんて?」
「匿名の運送サービスを始めようと思ってるんだ。
なかなかいいアイデアだと思わないか?」
「労働環境の見直しを! 労働者の権利拡大を―」
「万寧市での労働者による大規模なデモ活動に対し、
海南武警は治安維持目的での展開を示唆しています」
「これはどう見ても武力による解決ですよ。
平和的な解決をしなければ、
ますます問題は拡大していくでしょう」
労働者は表にも裏にも存在する。
サラリーマンから密輸業者まで、
資本主義社会は歯車のように回り続ける。
「クソォ、あと5分で上がりだってのに。
どうしたって強盗犯なんて相手する羽目に
なるんだよぉ…」
「おいおい、何言ってんだよ。
こんな自由を押し込んだようなところで勤務する方がバカだぜ」
「海南警察によるデータによると、
犯罪に使用させる銃器の割合は
チェコ軍の流出品から
民間会社による安価な物へと徐々に変わっており―」
「海南特区における犯罪者の重武装化は、
今や無視できないものになりつつある。
海南武警の重武装を早急に行うべきだと私は思うよ」
「畜生! よりによって試射で暴発しやがって!」
「はぁ!? おいおいおい、
どうしてそんな粗悪品買ったんだよ!?」
「100ドルの強盗をする為だけに
500ドルもする銃を買うと思うか!?」
もちろん、労働者がいれば犯罪という名の労働を行う者もいる。
二束三文の値段で買いたたかれるサタデーナイト・スペシャルから
莫大な現金を輸送する護衛付きの輸送車襲撃まで、
それによって動く金額はピンキリだが。
「次のニュースです。
チェコ航空はヨーロッパ向け路線の拡大を計画―」
「シュコダ社のコディアック新型モデル、ついに発売。
密林でも運用できるパワフルな製品です」
「…本日の最新情報によると、
プラガ社の株価は先月と比較して5%上昇しました」
企業は日々この地における利権を巡って争っている。
ありとあらゆる最新テクノロジーが研究され、
一週間ごとに家電製品から銃器まで
種類を問わず混合玉石な企業から新商品が発売され、
株価チャートは凄まじい勢いで変貌する。
この街は一睡も眠ることは無い。
「ああクソ、もう軽機の弾丸が切れやがった!
こうなったらぶっ殺せるだけぶっ殺してやる!」
「容疑者は依然として発砲中!」
「牽制するぞ! あそこの遮蔽物まで前進する!」
「片手で短機関銃ぶっ放せる相手に勝てるかよ!?
しかも軍用銃だぜ!?」
「こっちも軍用だろうが! 行け!」
その時、犯人は不幸なことに上空を
ゆっくりと飛行している海南武警のヘリに気づいていなかった。
空中に不気味に静止しながら、
搭載している14.5mm対物狙撃銃の狙いを定めている。
「…本部から発砲許可が出た。
無力化させていいぞ」
「了解」
次の瞬間、対物狙撃銃が辺りへと乾いた銃撃音を
響かせながら一発だけ発砲した。
直後、犯人が乱射していた軽機関銃が
それを持っていた右手ごと地面に吹っ飛んでいく。
「お、俺の手が! 手がぁ!」犯人に告ぐー 直ちに武器を捨て投降せよ! 」
悲鳴を上げながら右手首を抑えている犯人に対し、
海南武警の隊員たちが無慈悲にも銃を向けながら
この島において最も多用されているであろう
単語を形式的に言い放つ。
「
こうして一つの出来事が終わり、そしてまた―
海口市の一角にある一棟のビルで、
再び一つの出来事が新たに起ころうとしていた。
「昨日BISから送られてきたデータなんですが…
どうやら、事態は一刻を争うようです」
「…何? ここの政府は、一体全体何を考えてやがるんだ?」
→Audi, Vide, Tace/聞け、見よ、黙れ
すき
おお、モルさんに褒められた…
ヤッター()
「止めろ」
ペストマスクから出る触手を白衣を着た龍人が素手でそれを塞ぐ。金色に輝く小麦畑で、小さなサイロか倉庫か、れんが造りの壁に崩れ落ちるように座る。龍人は一体どこにいた?彼女の発音をよく聞いてみれば酷い広東訛りの英語だ。ペストマスクが龍人を困惑の様子を見せながら覗く。
「何故?態々生かしておいて何の得になる?」
「生かしておけばより多くの知見が得られる」
「ここで取り込んでしまえばそのようなこともしないですむ」
「それがお前の言う同族の進化のためってか?」
「そのためにここに来た」
「…このことを処理すんのはシナノの仕事だ。政治が絡んでくることになる」
「面倒ごとを避けたいなら回収するのはこいつの一部だけにしといた方がいい」
「…ではどうするつもり?」
「能使敵人自至者、利之也。能使敵人不得至者、害之也…」
龍人がアーサーの方に向き直ると、背中から大剣を取り出して彼女の頭に向ける。命乞いをする気力もないのか、それともそれを諦めているのか、彼女は全く抵抗しようとしない。
『あなた…一体どこに?」
弱々しく血の混じった音が喉から飛び出す。傷が痛むのか上手く発音できず一部が途切れ、龍人はそれでも構わず剣を向けた。
「レッドオーシャンの回し者…治安介入情報局か。我々はイベリアから来た」
『……何が目的?』
「単なる観光だよ。事を荒立てるつもりもない」
「我々の要求は二つ。一つは私たちが何かしない限りお前たちも何もしないこと、さっきも言ったように目的は観光だ。お前たちに危害を加えるつもりはない」
『…』
「そしてもう一つ。お前の身体の一部をコイツに提供してやること。どこにするかはお前が決めろ」
穴の空いた自身の手を見て、腹を見て。
出てくる血を拭いながら見つめる龍人からの視線に目を逸らす。
「っま、いきなり言われてもって感じだよな。その様子だと再生は人間と同程度ってとこか?」
「まぁいい…適当なとこに連れてってやる、そこで治療を受けろ。代わりにお前の手から一部もらう」
龍人が彼女の手首を掴むと、一瞬立ちくらみを感じながらもなんとか彼女は立ち上がった。力無く弱々しい動き。いつまで歩けるかも分からない。
「おいカッル、手伝え」
「君がやっていることだろう。私に何の関係がある?」
「おめーとその同族のためにやってやってんだぞ。少しは手伝え」
多分これで終わりです。疲れたので足んない部分がありましたら番外編でも作って補完しましょう()